主人公の表情
どんな局面に立ち至っても、大声を出したり、感情をあらわにしたりすることのないポーカー・フェイスのドンが、ただ一度だけ必死の表情を浮かべる瞬間がある。
可能性のありそうな女たちを訪ねたあとも、「幻の息子」については何ひとつ確かなことがわからない。
旅から家に戻り、ウィンストン一家と関わるだけの日常に回帰したドンに、あるとき、近所をうろつくヒッチ・ハイカー風の若者が眼に留まる。
もしかしたら、あの若者は自分を捜しているという「幻の息子」なのではないか。
もちろん、そういう台詞はないが、そのような心の動かし方をしただろうことが見て取れる。
というのは、女たちに会いに行く旅の最初から、すれちがう若者に眼を惹かれるようになっているところが描かれているからだ。
しかもうそのヒッチ・ハイカー風の若者は、帰りの空港でも出会い、気になっていた。