中年危機
「ブロークン・フラワーズ」、2005年アメリカ映画/1時間46分
中年というのが、いったいいくつからいくつくらいまでをさすのかよくわからない。
しかしかりに、それを四十代から五十代とするなら、「中年の危機」という言葉は、四、五十代の男性の危機と言い直すことができる。
中年には男性だけでなく、女性もいるはずだが、なぜか「中年の危機」は男性に訪れるものとされている。
たぶん、人生における危機には二つの種類があるのだろう。
ひとつは、健康を害したり、職を失ったり、親族が不運に見舞われたりと、その人をめぐる状況が明瞭に悪化することによってもたらされる「具体的な危機」である。
そしてもうひとつは、特に何が悪くなっているか定かでないまま、精神的にじわじわと追い詰められていくことによってもたらされる「不可視の危機」である。
「中年の危機」というとき、多くはぽんやりとした不安や苛立ちを伴う「不可視の危機」を意味するように思われる。
もちろん、中年男性の誰もが危機に見舞われるわけでもない。
かりに見舞われたとしても、それは「中年の危機」一般に解消されるものではない。
危機は、ひとりひとり固有のものとして存在するはずなのだ。